工房で生まれる、金工のかたちとつくる時間 開催!

2026/03/06 │##新着情報##


春のやわらかな光が街を包み、少しずつ外へ出かけたくなる季節になりました。

皆さま、いかがお過ごしでしょうか。

コートやニットに包まれながらも、
ふとした仕草でのぞく首元や手首に、アクセサリーの存在が静かに映える頃。

春を待つこの時期だからこそ、小さな輝きが装いにやさしい変化を添えてくれます。


そんな“春待ち”の季節に、3月中旬、POPUP「工房で生まれる、金工のかたちとつくる時間」を開催いたします。

このブログでは、作品に込めた想いや制作の背景、そして、少し先の春を思い描きながら楽しんでいただける金属工芸の魅力あふれる世界を、これから少しずつご紹介していきます*



POPUP 開催概要

📍開催情報
・日程:3月13日(金)〜3月15日(日)
・時間:10:00〜20:00 ※最終日のみ~18時
・場所:柏髙島屋ステーションモール新館10階 BeARIKAポップアップ

・アクセス:JR線・東武アーバンパークライン(野田線)柏駅直結

車椅子でお越しの方へ

車でお越しのお客様

また、今回のPOPUPでは、
・職人による実演
・作品の展示販売
・ついぶ柏工房で指輪の制作体験(空席があれば当日でもご案内可能)
などもご用意しております。


展示販売では異なる金属が織りなす色のコントラストや、光の角度によって変化する表情、そして使い込むことで深まっていく風合いも、ぜひ会場でゆっくりとご覧ください。

時間とともに育つ金属の魅力を、実際に手に取って感じていただけたら嬉しいです。


また、会場内では指輪のサイズ診断も行います。

意外と知られていない正しいサイズの選び方を、職人が丁寧にご案内いたします。指の形や関節の特徴に合わせたサイズを知ることで、着け心地が変わり、手元のコーディネートがより一層楽しくなりますよ*



コンセプト

今回の展示のコンセプトは、
“「金属工芸の楽しさや面白さを伝えること」”です。


金属という、永く残り続ける素材に、
今この瞬間の想いをそっと刻み込む象嵌。

異なる金属が出会い、溶け合い、
静かにひとつのかたちとなっていくその工程には、
目には見えない時間や、手のぬくもりが宿っています。

触れたときに感じる、ひんやりとした質感。
手のひらにのせたときに伝わる、確かな重み。
そして、光の角度によってさりげなく表情を変える繊細な輝き。

写真では伝えきれないその奥行きを、
ぜひ会場で、実際に手に取りながら感じていただけましたら嬉しいです。


日々の装いにそっと寄り添い、
これから重ねていく時間とともに、
より深い風合いへと育っていく象嵌の魅力。

春のはじまりのひとときに、
その小さなきらめきと出会っていただけますように。



代表/オーナー 中村光男(鎚舞)について

中村光男(鎚舞)は、金工職人作家として長年活動してまいりました。

なかでも金属に異なる金属をはめ込む「象嵌(ぞうがん)」技法に深く取り組み、独自の表現を追求し続けています。


金属は、冷たく硬い素材と思われがちですが、光の当たり方や仕上げによって、やわらかく有機的な表情を見せることがあります。

直線的で硬質な印象の中に、なめらかな曲線や繊細な陰影が生まれる瞬間――そこに金属ならではの魅力があります。

また、叩く・曲げる・延ばす・磨くといった工程を重ねることで、金属は驚くほど豊かな表情へと変化します。

ひんやりとした質感を持ちながら、使うほどに手になじみ、温もりを感じさせてくれる。その“硬さの中のやわらかさ”が、金属工芸の奥深さです。

さらに金属は、時間とともに色味や風合いが変化していきます。

完成した瞬間が終わりではなく、そこから持ち主とともに歩み、表情を育てていく素材でもあります。


こうした長年の研究と工夫の積み重ねから生まれたのが、新しい象嵌技法「ついぶ象嵌」です。

細く華奢な指輪にも繊細で華やかな表現を施すことができるこの技法は、歴史上にも前例のないものとして日本特許を取得しています。


無機質と有機、硬質と柔軟。

相反する要素が共存する金属の世界を、ぜひ実物でご体感ください。

皆様のご来場を心よりお待ちしております。



■ 中村 在廊日程

13日(金)・14日(土)・15日(日)
※終日在廊予定

在廊日は、象嵌についてのご質問やオーダーのご相談も直接承ります。どうぞお気軽にお声がけください。



POPUP開催経緯

長年にわたり象嵌と向き合う中で、「もっと繊細に、より美しく象嵌を施すことはできないだろうか」という問いを抱き続けてきました。

文化財の復元模造や現状模造の仕事に携わり、先人たちの技に直に触れるなかで、象嵌という技法が持つ表現の深さと完成度の高さに強く心を打たれました。

わずかな線や面に宿る緊張感、素材同士が綿密にかみ合うことで生まれる気品。

その一つひとつが、長い年月をかけて磨かれてきた技の結晶であることを実感しました。


その系譜の中で、自身も新たな一歩を踏み出したいという思いから試行錯誤を重ね、特許を取得した象嵌技法「ついぶ象嵌」が誕生しました。

金属に無理を強いるのではなく、素材が最も美しく応えてくれる方向を探りながら工程を組み立てることで、これまで難しいとされてきた細く華奢な指輪への象嵌を可能にしました。


本POPUPでは、そうした探求の歩みの中から生まれた作品をご紹介いたします。

伝統を敬いながらも新たな表現へ挑戦する、その現在地をご覧いただけましたら幸いです。



展示内容

本展では、
アクセサリーをはじめ、器、立体作品など、さまざまな作品をご紹介いたします。

身につけるもの、日々の暮らしの中で使うもの、
そして空間に佇む造形作品。

それぞれのかたちを通して、金属の質感や加工の違い、素材同士が出会うことで生まれる表情の豊かさを感じていただける構成となっております。

日常に寄り添う親しみやすさと、造形としての静かな存在感。

その両面を行き来しながら、「工芸」という枠にとらわれることなく、
素材や形そのものの面白さを直観的に楽しんでいただけたら嬉しいです。

難しい知識がなくても、まずは「きれい」「おもしろい」と感じる感覚から。


金属という素材の奥行きを、
自由なまなざしで味わっていただける展示を目指しました。

指先に咲く“象嵌の花”を、ぜひご覧ください。



社名の由来

「ついぶ工房」の“ついぶ”は漢字で「鎚舞」と記します。

この名称は、京都で代々飾り金具を手がけてきた職人の家計に生まれ、独立して鎚舞工房を立ち上げた代表・中村が禅語から着想を得て生み出した作家名に由来しています。

“鎚舞”のもととなった禅語は「鉄鎚舞春風」(てっつい しゅんぷうにまう)です。

重く力強い鉄の鎚(つち)がやわらかな春風に乗って軽やかに舞い上がる―そんな一見ありえない情景を表した言葉です。

禅語とは、禅の精神を端的に示す短い言葉のことを指します。


「温故知新」「有言実行」「日日是好日」といった、私たちにもなじみがある四字熟語もその一つです。

昔から受け継がれてきたこれらの言葉は、日々の過ごし方や物事の捉え方を見つめ直すきっかけを与えてくれます。

何気なく目にした言葉の意味を考え直すことで、自分自身の振る舞いや考え方をより良い方向へ導くヒントになることもあります。


「鉄鎚舞春風」には、「重い金鎚が春風に舞うはずがない」という常識に縛られてはいけない、という教えが込められています。

本来ならありえないとされる光景をあえて描くことで、固定概念を超える発想の大切さを伝えているのです。

できないと決めつけず、挑戦することで未来は変えられる―そんな前向きなメッセージが、この禅には込められています。


代表の中村は、「多くの人に、自分の手で何か作る楽しさを知ってほしい」「実際に手を動かす面白さを感じてほしい」と願っています。

また、「金属工芸の技術を次の世代へ受け継ぎ、この世界をさらに盛り上げていきたい」「難しいといわれることや新しい挑戦にも、常識にとらわれず取り組みたい」という想いも大切にしています。


金属を造形する際に振るう金鎚が、まるで春風に舞うかのように軽やかであること。

その姿と、自らの信念を重ね合わせて名付けられたのが「鎚舞」です。

手作り体験を通して、ものづくりの喜びや達成感を感じていただければ幸いです。



彫金における象嵌とは何か ― 伝統技法と現代に生きる職人技

象嵌(ぞうがん)とは、金属や木地などの母材に溝を彫り、そこへ別の素材を組み込んで文様を表現する装飾技法です。

とくに彫金の分野では、金・銀・銅・赤銅(しゃくどう)など異なる金属を組み合わせ、繊細かつ立体感のある作品を生み出します。

日本では刀装具や仏具、装身具の装飾として発展し、精緻な手仕事の技として今も高く評価されています。


象嵌の歴史は古く、古代オリエントや中国を経て日本へ伝わりました。

奈良時代の正倉院宝物にも象嵌技法の例が見られ、江戸時代には刀の鍔(つば)や小柄(こづか)などに高度な象嵌が施されました。

特に加賀象嵌や京象嵌は、日本の彫金象嵌を代表する伝統技法として知られています。


象嵌の主な技術と種類

彫金における象嵌にはいくつかの種類があります。

1. 平象嵌(ひらぞうがん)

母材に浅い溝を彫り、そこへ金や銀を打ち込む技法です。

表面はほぼ平滑に仕上がり、上品で繊細な表現が特徴です。刀装具や香炉などに多く用いられました。


2. 高象嵌(たかぞうがん)

模様部分をやや盛り上げるように仕上げる技法で、立体感と存在感があります。

光の当たり方で陰影が強調され、豪華な印象を与えます。


3. 布目象嵌(ぬのめぞうがん)

母材の表面に細かい格子状の傷(布目)を刻み、そこへ金箔や銀箔を押し込む方法です。

比較的広い面積に装飾を施すことができ、華やかな仕上がりになります。


これらの技法は単独で使われることもありますが、多くの場合、彫りや打ち出し、色金の着色など他の彫金技法と組み合わせて表現されます。



象嵌に用いる道具

象嵌制作には、繊細で専門的な道具が欠かせません。

  • タガネ(鏨):溝を彫るための基本工具
  • 金槌(かなづち):タガネを打ち込むために使用
  • ヤスリ:形状を整える
  • 磨きヘラ:仕上げと圧着
  • ピンセット・小型万力:細部作業用

タガネは用途に応じて刃先の形状が異なり、平タガネ、毛彫りタガネ、布目タガネなど多様です。

職人は自ら刃を研ぎ、作品に最適な状態を保ちます。この道具づくりもまた、彫金技術の重要な一部です。



作業工程と風景

作業はまず、母材に下絵を描くことから始まることが多いですが、あえて下絵を描かずに制作を始める方もいらっしゃいます。

次にタガネで慎重に溝を彫り込みます。この工程は緊張感に満ち、わずかな力加減の違いが仕上がりを左右します。


溝が完成したら、組み込む金属を適切な形に加工し、金鎚で打ち込みます。

打撃によって金属がわずかに広がり、溝に密着することで外れにくくなります。

その後、余分な部分を削り取り、表面を研磨して完成です。


工房では、一定のリズムで響く金鎚の音が空間を満たします。

金属同士が結びつく瞬間の手応えは、職人にとって何物にも代えがたい喜びです。

細かな作業を何時間も続ける集中力と、長年培った感覚が求められます。



現代に受け継がれる彫金と象嵌

現代では、伝統工芸品だけでなく、ジュエリーやアート作品にも象嵌が活用されています。

異なる金属の色彩コントラストは、機械加工では再現しにくい温かみを生み出します。


彫金と象嵌は、単なる装飾技法ではありません。

素材の特性を理解し、道具を使いこなし、長い歴史の中で磨かれてきた日本の金工文化そのものです。

手作業だからこそ生まれる微妙な揺らぎや質感は、現代においても高い価値を持ち続けています。

象嵌は、金属の中に別の金属を組み合わせて、異なる素材を調和させる芸術です。



象嵌の「合う」感覚――

金属と金属がぴたりと呼応し合い、静かに一体となる瞬間。

その美しさを、より繊細に、より軽やかに表現できないか。


文化財の復元模造や現状模造に携わりながら、先人たちの高度な技に触れるたび、象嵌の奥行きと表現の深さに心を打たれてきました。

日本の伝統金工、とりわけ象嵌は、単なる装飾技法ではなく、素材と対話しながら完成へ導く「時間の積み重ね」そのものでもあります。

そうした探求の中から生まれたのが、特許取得の象嵌技法「ついぶ象嵌」です。



ついぶ象嵌とは

従来の象嵌は、しっかりとした厚みや幅を必要とすることが多く、細く華奢な指輪に施すには高度な制約がありました。
ついぶ象嵌は、金属の“応えてくれる方向”を見極めながら、独自の工程で緻密に象嵌を施す技法です。

  • 極細のラインにも対応できる精緻さ
  • 金属同士が自然に密着する安定感
  • 面ではなく“粒”のように咲く、軽やかな表情

その名のとおり、粒(つぶ)が集まり、指輪の上に小さな花が咲くような印象を生み出します。


ついぶ象嵌の魅力

1. 華奢なフォルムとの両立
細いリングにも象嵌の意匠を美しく施せるため、軽やかで日常に寄り添うジュエリーに仕立てることができます。

2. 奥行きのある輝き
表面に“乗せる”のではなく、“合わせる”ことで生まれる陰影と深み。見る角度によって表情が変わります。

3. 伝統と革新の融合
長い歴史を持つ象嵌の精神を大切にしながら、新しい可能性をひらく技法です。


金属は、力で従わせるものではなく、対話しながら形を見出すもの。

ついぶ象嵌は、その対話の中から生まれた、小さく静かな革新です。


実際にその工程の一部を、会場では中村が目の前で実演、作品解説をいたします。

普段なかなか見ることのできない象嵌の手仕事を、間近でご覧いただける機会です。


また、一つ下の9階常設店「ついぶ柏工房」では、お客様ご自身で指輪やバングルなどを制作していただける体験もご用意しております。

空席があれば、当日のご案内も可能です♪

ものづくりのひとときを、ぜひお気軽にお楽しみください。



過去の展示の様子

2025年9月、京都の歴史ある洋館ホテル 長楽館 にて開催された芸術祭において、「ついぶ象嵌」を施した指輪のリサーチ展示を行いました。

会期中には約500名もの来場者にお越しいただき、幅広い年代の方々から貴重なご意見やご感想を頂戴することができました。


展示では、実際に作品を手に取り、間近でご覧いただくことで、「ついぶ象嵌」という技法そのものへの関心や驚きの声が多く寄せられました。

中でも特に印象的だったのは、30代後半から50代の女性の方々からの反応です。

目を凝らしてようやく見えるほどの、ごく小さな薔薇の細工について、

「胸がきゅんと熱くなるような感覚があった」

「こんなに小さいのに、どうしてこんなに心を動かされるのだろう」

といったお声を数多くいただきました。


肉眼ではほとんど判別できないほど繊細な薔薇の意匠が、かえって見る人の想像力をかき立て、静かで深い感情を呼び起こしていることが伝わってきました。

その反応は、単に技巧への驚きというだけでなく、日常の中で忘れがちな“ときめき”や“愛おしさ”を思い出させる体験として受け止めていただけたように感じています。


今回の展示を通して、「ついぶ象嵌」が持つ可能性や、繊細な装飾が人の心に与える影響について、改めて多くの気づきを得ることができました。

ご来場くださった皆さまからの温かなご感想は、今後の制作活動にとって大きな励みとなっています。



最後に

金属の持つ多様な性質を活かして制作した作品を通じて、金属工芸の面白さや奥行きを、より身近に、そして楽しみながら感じていただけましたら幸いです。

ぜひ会場にてご高覧ください。皆様のご来場を心よりお待ちしております。


【開催概要】

・日程:3月13日(金)〜3月15日(日)
・時間:10:00〜20:00(※最終日のみ18:00まで)
・場所:柏髙島屋ステーションモール新館10階 BeARIKAポップアップ


ついぶ柏工房